アートアンドアーティスト
倉嶋 正彦    
倉島正彦 視而不見シリーズ カオスモス/冨岡雅寛編
2003.7.17〜7.30 Gallery Para GLOBE
冨岡雅寛のカオスモスマシンは、参加型の自然現象発生装置である。まず、一度お試しいただきたいが、このカオスモス(自然現象)の不思議な動きに人は大抵見入ってしまう。
倉嶋正彦はこれまで映像作家としてカオスモスマシンに携わってきた。今回の展覧会は、倉嶋、冨岡の共同企画である。倉嶋はふたつの異なるカオスモス現象を、映像を使って実験的にクロスさせる。
『複数の異なる現象が重なって見える新たなビジュアルイメージの確認』を試みる。
会場の対角線上にそれぞれ違った流体現象を起すカオスモスタービュレントマシンとプロジェクターを設置し、真ん中に吊るされた半透明のスクリーンに両側から投影する。一つのマシンで生まれるカルマン渦が映され、半分にはスクリーンの反対側のマシンで起こる熱対流の流れ(ベナ‐ル対流)が映される。スクリーンの真ん中でそれぞれのカオスモス現象が交差する。このスクリーンは、プロジェクターの投影の反対側の映像の方がクリアに見える。マシンを操作し、カオスモス現象を起し、現象がプロジェクターにより拡大投影され、対面からの映像と交わる。
銀色の流体が、光に取込まれ、少し青みがかって写し出される様は美しい。
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有機的である流体現象のイメージはとても艶かしく、見るものをひきつける魅力に溢れている。
それぞれには個性があり、そして異なった2つ(今回の事例)の流体の干渉から生命のエロスのようなイメージと、流体どうしの会話を視覚で感じ取れた。
設定条件や施工の完成度をもっと高めてゆけば、きっともっとそのことが明確になった。(エロチック度も増すだろう)
視而不見の立場で言えば、「流体にエロスを感じ、それらの艶かしい動きから、操作するものが気持ちをこめたとき、なにか不思議な精神が内面から触発され、流体の抽象世界にイメージをふくらませるだろう。さらに「姿見えない相手」の操作が発する流体現象と会話しているかのように。」そんな光景を切り取れたのではないか。
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と倉嶋はコメントを残す。
映像の作品は、環境の条件に大きく左右される。真っ暗闇と少しでも視界が認識される空間とでは同じ作品でも感じ方が違う。
動的パフォーマンス、音的パフォーマンス、視的パフォーマンスを次々と見せてくれるカオスモスマシンに今後、倉嶋の視線はどのように影響するだろうか。(敬称略 2003.8.10motoko)
撮影:飯村昭彦、倉嶋正彦、 CHAOSMOS