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冨岡雅寛カオスモス展’04[CHAOSMOS Zone]総覧  

宮田徹也/日本近代美術思想史

 

         
     

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 冨岡雅寛カオスモス展’04[CHAOSMOS Zone]は、2004年10月1日(金)から10月30日(土)まで、東京都港区麻布十番のMedia Bar infocurious (http://www.infocurious.com/)において開催されました。スペシャル・イヴェントとして、2日(土)には[CHAOSMOS LIVE Vol.3]、16日(土)には[CHAOSMOS+Visual Art/倉嶋正彦]、24日(日)には[CHAOSMOS+Ruby+Jun]が行なわれました。
 常設されたマシンは以下の通りです。

・ Chaosmos Acoustics Wave Machine(2001)〈以下、CAWM。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 10(1999)〈以下、C10。〉
・ Chaosmos Particle Machine 1(1994)〈以下、CP1。〉
・ Chaosmos Particle Machine 2(1994)〈以下、CP2。〉
・ Chaosmos Tornado Machine(1996)〈以下、CTM。

以下のマシンは、[CHAOSMOS LIVE Vol.3]以後、常設となりました。

・ Chaosmos Ripples Machine(2003)

マシン以外の常設として、3日(日)から[CHAOSMOS LIVE Vol.3]と[CHAOSMOS’94〜’01]のビデオ上映、倉嶋正彦氏が、飯村昭彦氏の写真をデジタル処理して作成したフォトプリント、「Chaosmos Visual Remix」大3枚、小4枚の展示がありました。
 スペシャル・イヴェントの際に、使用されたマシンを記します。

[CHAOSMOS LIVE Vol.3]
・ 乱流系新作(2004)〈以下、新作。〉
・ Chaosmos Magnetic Acoustics Machine(2001)〈以下、CMAM。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 6(1997)〈以下、CTFM。〉
・ Chaosmos Tornado Machine(1996)〈以下、CTM。〉
・ Chaosmos Ripples Machine(2003)

[CHAOSMOS+Visual Art/倉嶋正彦]
・ Chaosmos CXC-1(2002)〈以下、CC1。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 10 (1999)〈以下、C10。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 2-3(1999)〈以下、CT2。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 8 (1998)〈以下、CT8。〉
・ Chaosmos Turbulent Flow Machine 3(1997)〈以下、CT3。〉
この日は山口夏実氏が、キーボードプレイヤーとしてゲスト参加しました。

[CHAOSMOS+Ruby+Jun]
・ 本来の姿では設置されなかった、共振振り子系カオスモスマシンの新作
・ 上記のマシンのパーツを用いた、冨岡+原田による、非=カオスモスマシンの新作〈以下、Drop of Water made Shade with Sounds=DWS。〉
・ Chaosmos Acoustics Wave Machine(2001)〈以下、CAWM。〉
・ Chaosmos Tornado Machine(1996)〈以下、CTM。〉
この日は原田淳氏が、パーカッションプレイヤーとしてゲスト参加しました。

 今回の個展が、今までと異なる点は、3点あります。

・ ギャラリーという場ではなかったこと
・ マンスリーであったこと
・ パフォーマンスが立て続けにあったこと

カオスモスシリーズは2002年11月29日から12月12日まで、代官山・Hair Salon INTIATEにおいてミニ個展を開催しています。それ以前もその後も、完全なホワイトキューブではない場所もありましたが、「画廊」という空間で展示を行なってきました。ダーツもあるMedia Barという異質な空間で、カオスモスシリーズの面白さがどれだけ伝わったのかは、訪れたお客様の反応を伺いたいところです。CAWMがダーツゲームの横にありながらも、違和感を覚えませんでした。CTM は、それぞれのライブをきっかけに場所が代わっていきましたが、その都度、空間に溶け込んでいたように思います。C10、CP1、CP2はカウンターに配置されていました。インテリアして余りにも溶け込みすぎていて、C10はハンドルが付いていますから「ここを回せば何かが起こる」ことが伝わったと思いますが、CP1、CP2を実際に動かしてみた方がどれだけいらっしゃったかは分かりません。これらの設置は、カオスモスマシンが持つ造形性の不思議さ、芸術作品が持つ権威的な「威厳」とインテリア・デザインの中間点に見えることを浮き彫りにしたのではないかと思います。当然、カオスモスマシンの特徴は、現象を発生させることにあります。しかし、ルックスの良さというのも、ここでは際立ったと思います。

カオスモスシリーズは、2週間の展示はあったでしょうが、マンスリーは初だと思います。Barという特殊な空間での制約もあったと思いますが、常設をもう少し多くして戴きたかったです。展示替えという手法もあったことでしょう。常設に新作がなかったことは、今までカオスモスマシンと付き合っていた方々にとっては、不満が残ったことでしょう。パフォーマンス用の大きなマシンを、その後、常設出来ないことも残念なことの一つでありました。しかし、画廊という空間の方が、実は特別な空間なのかも知れません。「美術」と呼ばれているものに特に興味がない方でも、今回の展示は、親しみやすく、楽しかったのではないでしょうか。キャプションをもっとしっかり作れば、「美術」としてだけではなく、カオスモスシリーズとしての面白さが伝わったとも思います。でもキャプションがなかったことも、また良かったのかも知れません。その様な自己主張のみを押し付けないところに、カオスモスシリーズの本領が隠されているのだと思います。

立て続けにあったパフォーマンスは、回を重ねるごとに、更に良くなっていったと思います。[CHAOSMOS LIVE Vol.3]は、久々のカオスモスライブということで、出演者に意気込みが強く感じられました。カオスモスマシンに触れたことのない、初めてカオスモスシリーズもパフォーマンスも見る方にとっては、かなりの驚きがあったのではないでしょうか。カオスモスシリーズを見慣れている方には、更なる発見が出来たことでしょう。
[CHAOSMOS+Visual Art/倉嶋正彦]、倉嶋氏のプライヴェート・パフォーマンスの感が強く、とてもリラックスした雰囲気が倉嶋氏にはありました。

[CHAOSMOS+Ruby+Jun]に原田氏の参加が決定したのは、一週間前だそうです。それでも原田氏は自分が出演しない16日にも足を運び、倉嶋氏がどのようにカオスモスマシンと対峙するかをじっと観察していました。足を運ぶという点では、別所氏は2日も16日も会場に訪れています。それぞれのパフォーマンスに見入り、会場の雰囲気を確かめ、自己がどのようにパフォーマンスを繰り広げようか、思案をひねったと思います。前のパフォーマンスが良ければ良いほど重圧になりますし、たくさん見ることによって、発想が拡散してしまう懼れもあります。そのようなプレッシャーを、別所氏は見事に撥ね退けて、パフォーマンスを成功させました。会場設置をした冨岡氏も、3度目ということで、2点の新作をうまく投入することが出来たのではないでしょうか。

 このように、[CHAOSMOS Zone]は、会場の制約により、自ずとパフォーマンスが主体の個展となりました。次回の横浜美術館における展示では、パフォーマンスにも使用するマシンを、常に、訪れた人が奏作できることを期待します。勿論、パフォーマンスも、とても楽しみです。この程の3度に亘るパフォーマンスでは、特に原田氏がスペシャリストとして、倉嶋氏が愛情を示す例として、奏作における示唆をして頂いたと思います。そんな風に、会場に訪れる方々が、カオスモスマシンと触れ合うことが出来ればいいなあと思います。

 
     
     
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