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ELECTRO−SPHERE感想  

宮田徹也/日本近代美術思想史研究

 

         
 

2006年1月7日、洗足学園音楽大学5号館2F小体育館に於いて、「ELECTRO−SPHERE 4ch Surround Live First Act」が開催された。イヴェントのHP(http://www.muviela.com/live/access.html )のトップにも、当日配布されたパンフレットの表紙にも「4つのスピーカーと隔離された空間によるヴィジュアルとサウンドの追求。」とあるので、これがテ ーマであると考えて差し支えは無いだろう。Conceptはパンフレットに記載されているので、引用する。

「普通にあるライブから脱却し、何か新しい事、発展的な事をやってみたい」

「仲のいい友達、先生と夕食に行った時に「こんなライブをやってみない?」と 」 軽い感じで話してみた。以前から思い続けていた事を漠然とはしていたが、『これまでの集大成・我々だから出来ること・これからの音楽』など…。これがきっかけとなり、試行錯誤の上このような形で実現した。

それぞれのベクトルが、一つの箱という概念を捨て、縦横無尽に繰り広げられ、しかしお互いの作品のそれぞれ引き立てる、またステージと観客との位置関係を可能な限り取り払い、感覚的に一つの空間として皆様に感じて頂くことをコンセプトとして出来る限り皆様に「興味深いライブ」としてお届け出来ればと思っていますので、お気軽に足を運んで頂ければ光栄にです((ママ))。(後略)

ERECTRO-SPHERE代表 松原悠大

このConceptから、代表の松原氏と出演者は普段から音楽活動を続けており、しかしそれは発展途上だからこそ、まず「集大成」としてこれまでの活動を総括し、次に自分達でなければ出来ない特殊性を検討し、最後に「これからの音楽」という課題をここから探ろうとする意図が感じられる。また、ジャンル、出演者/観客席の位置を超えることによって、従来のライブとの較差をだそうとしていることが、読み取れる。

会場は、「体育館」という割には天井が低く、バスケットゴールが無く、前方に舞台があって緞帳があるわけでは無かった。15m四方の正方形に近い空間で、カーテンが掛かっていたが、周囲は鏡張りになっている様子だった。さながら広めなダンススタジオをイメージさせた。

入って右手一辺は、PC、ミキサー等PA関係の機材が一列に並んでいる。松原氏はここに位置して、全体を見渡しているのであった。

中央には、出演者のそれぞれのPCが置かれている棚が組んである。ブラック・ライトが設置され、暗闇でも手元が見えるようになっている。公演中に使用されるであろうスタンド付ライトは、意図されることなく置かれている。二台のプロジェクターが、中央の棚から左右に向けられていて、5メートル程離れた地点に、それぞれスクリーンが張ってある。そのスクリーンを辺として、正方形の4つの角にはそれぞれスピーカーが設置されていた。

訪れた人々はこのスピーカーで囲まれた空間の中を、任意で着席することを求められた。特に閾(しきい)が設けられている訳ではないので、観客は自ずと中央の棚を囲んで、円を描くように、互いを知らずとも並んで床に直接腰を掛けた。

時間を45分程押して、17時15分に開場した。このイヴェントの顧問を務める米本実氏が、簡単な解説を加える。今回の出演は8組であり、4組を終えた時点で休憩を入れること、始めの4組の紹介等である。

17時30分に、開演した。各グループ凡そ5分程度の公演であったが、充分にそれぞれの個性が楽しめた。ARTIST/PERFORMER、タイトル、コメント順に引用して、当日の出演順に、公演に対する簡単な感想を記す。HP版と当日配布パンフレットには、僅かな違いが認められる。ここではパンフレット版に従った。

まっちょ/silence  ̄dark night ̄/創造と破壊の同時進行をテーマにしました。
【ゲスト】chaosmos冨岡 雅寛

鈴が鳴るような音の反復と、純和音に似た響きが重なる。心地よい、音の空気が蔓延する。会場は闇に包まれ、カオスモスマシンをライブで映し出す同一の映像が、2枚のスクリーンに投影される。カオスモスのHPを見ると(http://www.chaosmos.jp/index.html )、このマシンは1999年に発表したカオスモス・タービュレント・フロー・マシン2-3(Chaosmos Turbulent Flow Machine 2-3)であることが、分かる。ここある説明文を、引用する。「容器の底に手のひらを当てて暖めると液体に起きる熱対流のパターンが現れます」。カオスモスマシンは、人が関わることによって意義が生まれる装置である。この日マシンに触れたのは、後に出演するダンサー、岸裕子氏であった。彼女は、マシンの特性を短時間の内にマスターした様子で、様々な触れ方をして多くの現象を造り出すことに成功していた。このシルバーを基調とするモノクロの現象をカメラで撮り、音の感触に合わせて色を付けたり、グラフィックや街の実写映像を重ねたりして、映像に変化を与えていた。音にノイズは発生しない。心臓の活動のようなディレイがかかり、演奏と映像は終了した。冨岡氏、まっちょ氏共にお互いの作品の為に制作した訳ではないのに、違和感が発生しなかったのは、制作の幅の広さ=ゆとりを二者が持ち合わせているためであろう。音、カオスモスマシン、映像から、まっちょ氏が描いたコンセンプトが幾らか伝ってきた。余韻を残さず次の公演が始まってしまったことが、惜しまれる。

※文章は[ELECTRO−SPHERE]のサイトからの引用です。
全文はこちらですhttp://www.muviela.com/live/report1.html

宮田 徹也 awoniyoshi@themis.op.ne.jp

 
     
     
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