Clinamenという概念に出会ったのは、20代の前半でした。たしか、クセナキスが書いている何かの文章にあったと記憶しています。宇宙を可能にするためには、何らかの傾斜運動が必要である、というイメージが気に入って、いずれ何かのかたちで具体化したいと考えていました。‘96年にミッシェル・セールが著した、クリナメンと現代物理学のカオス理論を考察した本に出会い、カオスモスマシンとして如何に可能なのかを考えていました。
‘98年春に、パイプを傾斜すると、中を移動するバーが途中で不規則に角度を変える動作をする[Clinamen Machine
1]を製作し、その年の暮れに今回展示している、[Clinamen Machine 2]を製作しました。
この、[Clinamen Machine 2]によって、私が感じたミッシェル・セールの本に流れている感触は具体化出来ました。自然現象との対話・新たな自然観をテーマとするカオスモスシリーズにとって、このマシンの誕生は決定的なものだったと思います。
今回、このマシンのみの展示を思いついたのは、倉嶋正彦さんの存在があります。
「広い壁面で球体が傾斜運動を起こし、その軌跡としての乱流が広がる空間を作りたい」 という私の企画趣旨を、彼は完璧に理解してくれて、想像していた以上のクオリティでビデオ設定をしてくれました。様ような場所で、何度か展示している[Clinamen
Machine 2]ですが、彼の手により今回の展示はその魅力を余すところ無く引きだせました。倉嶋さんありがとうございました。
さらに、「それぞれが自身の軌跡を描く事に集中して欲しい」というコンセプトで依頼した3人のパフォーマー、入間川正美さん、冨岡千幸さん、倉嶋正彦さんによって描かれる傾斜運動が生む時空は、新たな次元を垣間見る事を可能にするでしょう。
今回の展示企画を実現する機会を与えていただきました、[ASK?]木邑芳幸さんに感謝いたします。
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